携帯端末 技術者の嘆き

 携帯電話販売のビジネスモデルを変えようとする動きが業界でささやかれている。そもそも販売奨励金=コミッションを餌に代理店に販売するモデルは市場の立ち上げ期に普及させる意味ではとても良く機能したことは事実だし、とてもいいアイデアだと思っている。この方式でユーザは高機能端末を、機能面から考えるとかなり安くで購入出来るというメリットをもたらした・・・というような議論は様々なところでされているので、特にこれ以上は触れません。

今日話題にしたいのは、携帯電話を作るメーカーの技術者のお話です。

 先日、ある携帯電話の代理店をされているOさんと話しをする機会がありました。彼とはもう5年来くらいのお付き合いをさせてもらっていますが、若くして経営の道に身を投じている素晴らしい方です。しばらくして、話題はゼロ円端末のことになりました。

 その前に、ゼロ円端末の説明をしておきましょう。ゼロ円端末とは、キャリアが新機種発売前後に行うセールなどで端末代金を0円で販売するものです。端末代金は0円ですがキャリアから販売代理店にコミッションが支払われるので、代理店にとっては仕入代金が全てパアになるわけではありません。

話に戻ります。

 ある携帯端末メーカーの技術者が自信を持って開発した機種がありました。その技術者はOさんのお店に来ていました。市場調査なのか、プライベートなのかは分かりませんが、やはり自分の開発した端末が気になっている様子です。しばらく店内を見渡すと、「新規0円!」などのポップを見て驚愕します。その技術者は、おそるおそるOさんに、
「あの〜、私が開発した○はいくらで売られているのでしょうか?」
と質問します。Oさんは正直に、
「0円です。」
と答えます。すると、その技術者はがっくりと肩を落として
「そうですか。。」
とつぶやき、帰っていったそうです。

 今の携帯電話の発展は素晴しいものがありますし、コミッションモデルは一定の成功を納めています。しかしながら、携帯端末を開発している現場の人々が、一生懸命開発した端末が0円で売られている事実を突きつけられる現在、彼らは更にモチベーションを高めて端末開発が出来るでしょうか?

 会社は人なり、人は心なり。人の心を分からずに経営は出来ないとは言います。このような観点から、携帯電話のコミッションモデルは否定すべきものなのかもしれませんね。