Paul Grahamによる「スタートアップの始め方」の個人的な要約(2)
原文はPaul Graham氏がハーバードコンピュータ協会で講演したものであり、本稿は、それを青木靖氏により訳されたものを個人的なメモの為に要約しています。
http://www.aoky.net/articles/paul_graham/start.htm
このエントリの読み方
- 時間がないときは、小見出し、黒丸、リストを読む
- それで意味が分からないときは、白丸などその下のアウトラインまで読む
- それでも分からない場合は、原文に飛ぶ
資金を集める
- 投資家の金を受け取るのは賢明な選択
- 自己資金は困難
- スタートアップで金持ちになる方法は、会社の成功のチャンスを最大化すること
- 金持ちになる方法は、自分が持つ株の量を最大化することではない
- 株を何か成功の見込みを高くするものと交換できるなら、それはおそらく賢明な選択
投資を受けるプロセス
- エンジェルによる投資(シードキャピタル)
- VCによる投資
エンジェルによる投資(シードキャピタル)
- シードキャピタルとはプロトタイプを開発する間の費用の数万ドルであり、わずかな金額なので手に入れるのは比較的容易
- 通常、シードキャピタル(シードマネー)は「エンジェル」と呼ばれる裕福な個人から得られる
- シードのステージにおいては、投資家は詳細なビジネスプランを持っていることを期待していない
- 半ページの契約文書だけで1週間以内に小切手が届くことも珍しくはない
エンジェル投資ステージに想定される(それだけに限定はされないが)会社設立における諸問題と注意事項
- 会社が存在するためには、創業者を誰にし、それぞれが株をどれだけ持つか決める必要がある
- 創業者が複数おり、貢献しようと思う度合いが異なっているという場合には、株の配分を適切なものにすべく大きな努力を払え
- ちゃんとできたか判断するための目安は、全員が少しばかり損をしているように感じ、自分の株の取り分よりもっと多くのことをやっていると思っているなら、株は最適に配分されている。
- 会社組織にする時期を遅らせるのには危険がある
- 創業者の中の誰かが袂を分かって同じことをする別な会社を自分で始めようとするかもしれないからだ。
- だからあなたが会社を設立するときには、株の配分をするときと同様、創業者全員で契約にサインして、みんなのアイデアは会社のものであり、この会社がみんなの唯一の仕事となるということに同意すべきだ。
- スタートアップが直面しうる最悪の問題の1つ「知的財産上の問題」がないか確認する
- 会社を設立するときにはまた、彼らが他にどんな契約にサインしているか尋ねるべきだ。
- 会社の価値がどれだけであるべきかをどうやって決めたらいいのか?
- 合理的な方法というのは存在せず、この段階における会社というのは賭でしかない
- 評価額というのは、私たちのアイデアの価値であり、そして私たちが将来に渡ってするすべての仕事の価値なのだ。
VCによる投資
- 実際のベンチャーキャピタルと取引する段階
- シードキャピタルでの投資を使い果たす前にVCにアプローチする
- VCは決断するのが遅い。
- 実際のVCから金を得るのは、エンジェルから資金を得るのにくらべてずっと大ごとだ。金額は大きく、通常数百万ドルになる。だから取引には時間がかかり、疲弊させられ、より厄介な状況を強いられることになる。
- VCからの投資を受ける際の注意点など
- VCはしばしば自分で選んだ新しいCEOを据えようとする
- VCと交渉するときには、あなたは自分で思っているよりも利点を持っている
- その理由は他のVCだ。私は今ではたくさんのVCを知っているが、彼らと話してみれば、それが売り手市場なことがわかるだろう。今でさえ金が多すぎ、選ぶべきうまい取引は少なすぎるのだ。
- VCはピラミッドを形成している(いわゆるピンキリだと言いたい)
- 基本的にVCは金の出所以外のものではない。
- 私なら一番多くの金を、一番早く、余計な紐なしで提供してくれる所を選ぶ。
- VCにどこまで話していいか
- たとえ金がほしくない場合でも、可能な限り多くのVCと話すといい。
- (a) 彼らはあなたの会社を買ってくれる企業の重役をしているかもしれない
- (b) あなたが印象的に見えるなら、彼らはあなたの競合に投資する気をなくすだろうから
- VCに接触するための最も効果的な方法としては、特に自分のことを彼らに知ってもらいたいが別に金がほしいわけではないというのであれば、カンファレンスがいい。カンファレンスというのはしばしばスタートアップがVCにプレゼンする場となることを意図して開かれている。
そしてその金をつかわないこと
投資家からの金は「使わない」
- 失敗するスタートアップのほとんどすべてについて、失敗の表面的な原因は金を使い果たしてしまうということだ。
- バブルの当時は多くのスタートアップが「早く大きく」なろうとした。理念的には、これは「多くの顧客を早く得る」ことを意味する。しかしこれは容易に「多くの人を早く雇い入れる」ということに流されてしまう。
- 人を雇わない
金の使い方
ゆっくりした成長、カスタマサポートの重要性、優れたユーザの価値
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- 以下は全文引用の方が分かりやすい
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私たちは状況によってゆっくりと成長せざるを得なかったが、振り返ってみれば、それはいいことだったのだ。創業者たちはみんな会社のあらゆる仕事を覚えることになった。ソフトウェアを書くだけでなく、私はセールスやカスタマサポートもする必要があった。
私はセールスはあまりうまくはなかった。
(中略)
しかし私はカスタマサポートの方はうまかった。カスタマサポートの人間が製品を隅々まで知り尽くしているというだけでなく、バグでもあろうものなら面目なく謝罪し、電話で話しているその場ですぐに修正するというのを想像してみてほしい。顧客は私たちを好きになってくれた。そして私たちは顧客のことを好きになった。口コミの評判でゆっくりと成長しているというときには、最初の一団のユーザたちというのは、自力で見出した目ざとい人たちなのだ。スタートアップの初期において、優れたユーザほど価値のあるものはない。彼らに耳を傾けるなら、勝てる製品をどうすれば作れるか教えてくれるだろう。彼らはそのアドバイスをただでしてくれるだけでなく、お金まで払ってくれるのだ。
- 「自分のやっているビジネスがわかっている」ことが何より重要
- 自分のやっているビジネスがわかっていることほど重要なことはない。
ひとたび(ユーザの数の上にせよ社員の数の上にせよ)大きくなったなら、製品を変えるのは難しくなる。この年は私たちの製品を改良するための実験の年だったのだ。この年の終わりまでには、私たちは競合よりはるかに先を行っており、彼らに追いつける見込みはなかった。そして私たちのところのハッカーたちはみんな長い時間をユーザと対話することに使っていたので、私たちはオンラインコマースについて誰よりも良く知っていたのだ。
オフィスの場所について
- プロフェッショナルらしく見えなきゃいけないとは思わないこと。
- プロフェッショナルというのはいい仕事を意味するのであって、エレベータやガラスでできた壁を意味するのではない。
- 住む場所としてデザインされたところをオフィスにしたらいいんじゃないの?
- 私はスタートアップの多くに、最初は企業向けの物件を避けてアパートを借りるようにアドバイスしている。スタートアップのオフィスに住みたいと思っているなら、住む場所としてデザインされたところをオフィスにしたらいいんじゃないの?
- 生産性の鍵は、みんなが夕食後に仕事に戻ってこられるということにある。
- 電話が鳴りやむ時間帯が、仕事を成し遂げるための最適な時だ。社員のグループが一緒に食事しに行き、アイデアについて語り合い、オフィスに戻ってきてそれを実装するなら、すごいことが起きる。